LOG IN

自然現象

by 有賀たいぞう

夜、私の畑は、動物たちの楽園になる。

真夜中に目が覚めると、動物が歩く足音がする。ズサリ、ズサリ、何か食べるものを探しているのかもしれない。畑の方からは、動物たちの鳴き声がする。何頭、何羽の動物が畑にいるのだろうか。

朝、起きて畑へ行ってみると、動物たちが野菜を食べ散らかした痕が、一面に広がっている。昨夜の訪問者は、シカ、イノシシ、ウサギらしい。野菜や草の食べ方を見ると、どんな動物が来たのかわかるようになった。

動物の来訪が頻繁になったので、ちょっとした柵をつくったのだが、私の努力は無駄に終わったらしい。動物たちは、やすやすと柵を乗り越えたり、土を掘ったりして、なんなく柵の中に入ってくる。

もっと頑丈な柵をつくるべきか、それとも野菜をつくるのをやめるべきか。

結局、今年の野菜は、すべてダメになった。趣味で野菜づくりをしているので、大きなダメージはない。野菜で生計を立てている人だったら、深い悲しみに襲われるかもしれない。

では、「動物たちを憎んだり、恨んだりすることはないか」と問われれば、このような気持ちはまったく無い。森のようなところで生活しているので、動物が来るのは仕方がない、と思っている。

大雨や洪水など、自然災害で野菜がダメになっても、大雨や洪水を憎むことはないだろう。ただ、その状況を受け止めるだけだ。

そもそも、私の畑は、動物たちのものではなかったのか。それを、人間が勝手に、ここは自分の土地だと言い張っている。人間だけが、土地の保有を宣言するのは、いかがなものか。動物にだって、土地を自由に歩き回る権利があるというものだ。

動物は、自然の生き物だ。では、人間はどうだろう。よく考えれば、人間も、シカ、イノシシ、ウサギと同じく自然の生き物である。地球に存在するすべての生き物は自然なものだ、と言っても良い。

ほかの人間から悪口を言われたとしよう。これは、シカが山の中で吠えているのと同じだ。人間が悪口を言うのも、シカが吠えるのも、同じ自然現象である。シカが吠えるのを聞いても不快にならないのに、ほかの人間から悪口を言われると、不快になったりする。

人間が言う悪口も自然現象の一つである、と割り切れば、どんなことを言われても気にならなくなる。

私は自然の一部、ほかの人も自然の一部、動物たちも自然の一部。みんな同じ自然である。

OTHER SNAPS